神奈川県／湯河原温泉『湯河原 源泉のお宿 千代田荘』の温泉解説−本物の温泉を使った宿のみご紹介しています。−温泉検索どっとこむ

◆この湯に浸かった著名人

◆温泉レポート

「湯河原 源泉のお宿 千代田荘」は、敷地内に自家源泉を持つ本格的な温泉旅館。
そしてこの宿は、湯河原温泉に高級旅館「山翠楼」「海石榴」を運営する野口観光グループの一員で、2019 年10月11日に待望の、かけ流し循環式の新大浴場＆サウナが1階にオープンした。
敷地内に自家源泉があるメリットは、湧出地から湯船までの距離が近いこと。距離が近いため、温泉に不純物が混じることや、空気と触れることによる泉質の劣化が最小限に抑えられる。
展望露天風呂の2つの湯船(「丸湯」と「角湯」)では源泉かけ流しで、その他の浴槽では、源泉かけ流し・循環ろ過併用型となっている。源泉かけ流しとは、温泉を湯舟に注ぎ、溢れた分はそのまま捨ててしまうという贅沢な湯使いのこと。常に新鮮な温泉に浸かることができるのは温泉好きにはたまらない。 しかし、不特定多数が入浴する男女別大浴場で源泉かけ流しにするのは衛生面で不安が残る。入浴前に充分にカラダを洗うなどのマナーを守らない人がいるかもしれないからだ。 そもそも源泉かけ流しは、厳密に衛生面を考慮すると、安心して入浴するためには1時間以内にその浴槽の温泉が完全に入れ替わるぐらいの湯量が必要とされている。しかしながら、おそらくそれほどの湯量を持っている施設は、国内で1割にも満たないだろう。そのため展望露天風呂以外では、新しい源泉を注ぎつつ、同時に消毒・循環を行い、清潔な状態をキープしているのだ。なお、ここの泉質は温泉成分が比較的劣化しにくい泉質という事も付け加えておく。
さらに、弱アルカリ性(pH8.4) であることに注目したい。一般的に人間の肌は弱酸性であるので、この温泉に浸かると肌表面と反応しツルツルした肌触りとなる。この肌触りは皮膚表面の古い角質が溶けているから発生する。湯上がりにはツルっとした肌に仕上がっているだろう。(弱)アルカリ性であることは、美肌の湯と言われる条件のひとつである。
ただし美肌の湯にも落とし穴があるので注意が必要。皮膚表面の角質が取れるとは湯上がり後に肌のバリアが一枚薄くなっていることを意味し、すなわち乾燥しやすい状態になっているということなのだ。(弱)アルカリ性の温泉に浸かる際は、普段から乾燥肌の人は特に注意が必要。 しかしこの温泉の場合はそのような心配は一切無用だ。泉質名は「ナトリウム・カルシウム−塩化物・硫酸塩温泉」。 塩化物泉、要するに塩分を含む温泉は、入浴するとまるでパックのように身体を覆ってくれる。このパックが湯上がり後の肌乾燥を防ぐ効果が期待できる。さらにこの塩分パックは入浴後の発汗を抑えて体温低下を緩やかにする。冷え性の方に特に効果的で、そのため塩化物泉は「熱の湯」とも呼ばれる。また、塩分には殺菌作用があるため、入浴することで肌表面のトラブルを広く抑えてくれる効果が期待できる。切り傷や火傷に効果を発揮するので、塩化物泉は「傷の湯」と呼ばれる。 もうひとつの泉質、硫酸塩泉もカラダを覆い、肌乾燥を防いでくれる。また、硫酸塩泉に浸かることで肌の蘇生が促される(新陳代謝を活性化される) ので、切り傷や火傷、ニキビ、乾癬(かんせん)、かゆみ、慢性湿疹など、皮膚表面のトラブルを広く抑える効果が期待できる。皮膚の余分な脂分を洗い流す力もあるため、オイリースキンの方にも効果が高い。硫酸塩泉であることも美肌の湯 と呼ばれる条件のひとつとされる。 この泉質に含まれる硫酸イオンは、血液に多くの酸素を送り込み（血行促進作用 ）と、肌に水分を補給させ、肌にハリと潤いを与える（アンチ-エイジング作用）。カルシウムイオンは鎮静作用があるため、高血圧症や動脈硬化症など、血管系の症状に効果があると言われる。血管のトラブルを防ぐ効果があるので、「脳卒中の湯」とも呼ばれる。ナトリウムイオンも含まれているため、高血圧症、動脈硬化症、外傷にも効果が高い。
泉質名に現れていない成分も見逃せない。メタケイ酸が源泉１kgあたり118mg含まれており、これは「温泉」の規定値(50mg)の2倍以上だ。メタケイ酸は一部の化粧水の原材料として利用されることもある天然の保湿成分。湯上がり後に、しっとり肌に仕上げてくれる。 またメタホウ酸も9.96mgで、規定値(5mg)の2倍近く含まれている。メタホウ酸は肌の洗浄作用があるため、ニキビ等、皮膚表面のトラブルに効果があると考えられている。また制菌作用もあり、目薬の成分に加えられている場合もある。
アルカリ性成分で肌の角質を落とすだけでなく、メタケイ酸で保湿、最後に塩化物、硫酸塩で肌をパックし整える。一回の入浴でここまで至れり尽くせりの温泉はなかなかない。しかも衛生面も考慮されたこだわりの湯使いだ。千代田荘はたしかにリーズナブルな温泉旅館ではあるが、温泉については高級旅館に引けを取る要素は全くないだろう。