温泉&旅 倶楽部

泉質別の解説

一般的な適応症と禁忌症、各泉質別の適応症と禁忌症をご紹介します。

②塩化物泉

Chloride springs

塩分パックの「熱の湯」/殺菌効果の「傷の湯」

温泉水1kg中に、溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩化物(塩素)イオン(Cl-の温泉。
陽イオンの主成分により、ナトリウム―塩化物泉、カルシウム―塩化物泉、マグネシウム―塩化物泉などに分類される。
塩分が主成分となっているので、飲用すると塩辛く、塩分濃度が濃い場合やマグネシウムが多い場合は苦く感じられる。
湯に浸かると、塩分がまるでパックのように身体を覆ってくれる。このパックが汗腺(汗を分泌する器官)を塞ぐので、湯上がり後の体温低下が緩やかになりポカポカ感が長続きするのだ。
このため「塩化物泉」は「熱の湯」とも呼ばれる。冷え性は、塩化物泉以外の泉質も適応症として認められることがあるが、「塩化物泉」は特に効果が高い。
同時に、長続きするポカポカ感は、末梢循環障害の改善に役立つ。またこの塩分パックは、温泉成分のコーティング効果保湿作用のため、湯上がり後の皮膚乾燥も抑えてくれる。
持続的な保温効果は、自律神経のバランスが整いやすく、精神的な安定感をもたらす。さらに体温上昇によりストレスホルモンの分泌が抑えられ、気分の改善に寄与する可能性があり、うつ状態に効果を発揮する。
また、皮膚の古い角質を取る、「(弱)アルカリ性単純温泉」「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「硫黄泉」などの、いわゆる「美肌の湯」の温泉に入った後の「塩化物泉」は、塩分コーティング&保湿作用で「仕上げの湯」とも称される。
また、塩分の殺菌作用で、きりきずや火傷に効果が発揮され「傷の湯」と呼ばれることもある。
飲用すると、塩化ナトリウムの効果で、胃の粘膜を刺激し胃酸の分泌を促進すると同時に胃の粘膜も保護される。そして、腸壁も刺激するので、腸の蠕動(ぜんどう)運動も活発になり便がスムーズに腸を通過するようになる。飲用の適応症に、萎縮性胃炎、便秘があるのはそれらの理由によるものだ。 ちなみに、「ナトリウム―塩化物強塩泉」とは、温泉水1kg中に、陽イオンの主成分がナトリウムイオンで、ナトリウムイオン 5,500 mg/kg 以上、かつ塩化物イオン 8,500mg/kg 以上の場合。
または、ナトリウムイオン、塩化物イオンどちらも240mval(ミリバル)/kg以上の場合をいう。

泉質別適応症 浴用 きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 ※硫酸塩泉と同じ
飲用 萎縮性胃炎、便秘
泉質別禁忌症 浴用 なし
飲用 なし
  • ■旧泉質名・・・食塩泉
  • ■湯の色・・・無色透明
  • ■味・香り・・・塩辛い・無臭
  • ■湯ざわり・・・塩分が多いほど、べたつき感
  • ■主な温泉施設・・・北海道・定山渓温泉「ぬくもりの宿 ふる川」/山形県・かみのやま温泉「有馬館」/群馬県・谷川温泉「別邸 仙寿庵」/群馬県・草津温泉「益成屋旅館」/神奈川県・箱根湯本温泉「箱根 花紋」/神奈川県・箱根宮ノ下温泉「箱根吟遊」/新潟県・越後長野温泉「妙湶和樂 嵐渓荘」/大分県・筋湯温泉「山あいの宿 喜安屋」/熊本県・黒川温泉「ふもと旅館」

一般的適応症

※すべての泉質に関わる適応症。

浴用

筋肉若しくは関節の慢性的な痛み又はこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進

飲用

※飲用には一般的適応症はありません。

一般的禁忌症

※すべての泉質に関わる禁忌症。

浴用

病気の活動期(特に熱のあるとき)、活動性の結核、進行した悪性腫瘍又は高度の貧血など身体衰弱の著しい場合、少し動くと息苦しくなるような重い心臓又は肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気、消化管出血、目に見える出血があるとき、慢性の病気の急性増悪期

飲用

※飲用には一般的禁忌症はありません。

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この記事の執筆者

執筆者:温泉コム株式会社 CEO 大竹仁一

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