温泉&旅 倶楽部

泉質別の解説

一般的な適応症と禁忌症、各泉質別の適応症と禁忌症をご紹介します。

③炭酸水素塩泉

Hydrogen carbonate springs

角質を軟化させる「美肌の湯」/湯あがり爽快

温泉水1kg中に、溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が炭酸水素イオン(HCO3-の温泉。
炭酸水素イオンは、皮膚の洗浄効果を高め傷口の消毒や殺菌を促すので、きりきずの治癒に役立つ。また、皮膚の古い角質を取り除いて潤いを保つ働きが促進され、皮膚乾燥症の改善が期待できる。さらに、含有する二酸化炭素(CO₂)が皮膚を通して体内に吸収され、末梢血管を拡張させ、血流を改善するので末梢循環障害に効果をもたらす。そして、血流が良くなる事で冷え性の症状が緩和される。
なお、「炭酸水素塩泉」は、陽イオンの主成分により、下記のように分類される。

(1)カルシウム(・マグネシウム)-炭酸水素塩泉(旧泉質名:重炭酸土類泉)
二酸化炭素、鉄などが含有しているケースが多い。
また、カルシウムやマグネシウムなどの土類が含まれると、鎮静作用や炎症を抑える効果が得られ、アレルギー性疾患、慢性皮膚病、じんましんなどに良いとされる。
飲泉すると、血糖値を低下させるので、耐糖能異常(糖尿病)にいい。また、利尿作用とともに、尿酸の排泄を促すので、高尿酸血症(痛風)に効果的。

(2)ナトリウム-炭酸水素塩泉(旧泉質名:重曹泉)
pH値はアルカリ性になる確率が高く、ナトリウム-塩化物や、ナトリウム-硫酸塩などが含有しているケースが多い。
炭酸水素ナトリウム、つまり重曹は、血行を促すとともに、古い角質を柔らかくする作用がある(乳化現象)
そして、石鹸のように皮脂や汚れを落とし、肌をなめらかに整えるクレンジング効果が期待できるため「美肌の湯」と言われる。
さらに、皮脂が減り肌の保護力が弱くなることで、肌表面の水分が蒸発しやすくなり「清涼の湯(冷えの湯)」とも呼ばれる。
飲泉すると、胃酸を中和し炭酸ガスを発生して胃の粘膜を刺激し活発にして消化を助けるので、胃十二指腸潰瘍逆流性食道炎に効果的。また、肝汁の分泌を促し、肝臓や膵臓の働きを良くするので、胆石症、慢性胆嚢炎、耐糖能異常(糖尿病)などにもいい。

泉質別適応症 浴用 きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
飲用 胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)
泉質別禁忌症 浴用 なし
飲用 なし
  • ■旧泉質名・・・重炭酸土類泉/重曹泉
  • ■湯の色・・・無色透明だが、黄褐色、緑褐色の場合も。
  • ■味・香り・・・
    「カルシウム(・マグネシウム)-炭酸水素塩泉」苦味・金気臭や薬臭がする場合も。
    「ナトリウム-炭酸水素塩泉」重曹特有の薬味があるが飲みやすい・金気臭や薬臭がする場合も。
  • ■湯ざわり・・・なめらかな感触
  • ■主な温泉施設・・・
    「ナトリウム-炭酸水素塩泉」宮城県・東鳴子温泉「旅館大沼」
    「含二酸化炭素-マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩泉」大分県・長湯温泉「丸長旅館」
    「ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉」鹿児島県・妙見温泉「忘れの里 雅叙苑」

一般的適応症

※すべての泉質に関わる適応症。

浴用

筋肉若しくは関節の慢性的な痛み又はこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進

飲用

※飲用には一般的適応症はありません。

一般的禁忌症

※すべての泉質に関わる禁忌症。

浴用

病気の活動期(特に熱のあるとき)、活動性の結核、進行した悪性腫瘍又は高度の貧血など身体衰弱の著しい場合、少し動くと息苦しくなるような重い心臓又は肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気、消化管出血、目に見える出血があるとき、慢性の病気の急性増悪期

飲用

※飲用には一般的禁忌症はありません。

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この記事の執筆者

執筆者:温泉コム株式会社 CEO 大竹仁一

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