≪業界初≫泉質表付き温泉レポート！地球の恵み「温泉」にこだわりぬいた、全国各地の源泉かけ流しの温泉宿を巡った実レポートをご紹介。

◆泉質名

◆美肌の湯　４要素

◆こんな人に最適

◆温泉レポート

岳温泉の旅館全てが、日本百名山に数えられる安達太良山と並びそびえる鉄山（てつざん）の南、くろがね小屋付近から湧き出る温泉を「引き湯」している。
その湯量は、毎分1290リットルもの湧出量を誇る。
そこからおよそ8km、標高差900メートルの傾斜を生かして山肌を流れ、宿があるエリアまで運ばれる。
途中、管の中で源泉は、適度に湯もみされて、肌にやさしい柔らかな湯になって、各宿に配湯されるというわけだ。
源泉湧出時は、70℃〜80℃だったものが、「お宿　花かんざし」に到着する頃は56℃ほどになり、さらに湯舟に入れる湯量を調節して、適温にしている。
岳温泉は、日本一源泉場所から遠い温泉地かもしれないが、泉質は非常に評判がいい。
一般的に、源泉地から近い方が、新鮮な温泉が味わえそうなものだが、酸性泉なので、劣化しにくいというデータもある。
心配な湯の鮮度も、入浴してみれば、そのフレッシュさが、すぐにお分かりいただけるはずだ。

泉質は、pH（ペーハー）2.5の「単純酸性泉」。
酸性泉とは、試験水1kg中、陽イオン成分の中の水素イオンが1mg以上含有しているもの。
日本特有の温泉とも言われ、特徴としては、殺菌効果が非常に高く、慢性皮膚病、特に水虫、切り傷などにいいとされる。
さらに、白癬（はくせん）症、トリコモナス膣炎、疥癬（かいせん）等にも効果があるという。
ただし、もともとが刺激が強い温泉なので、皮膚が弱い人に向かない場合も多く、湯ただれを起こしやすい泉質である事も覚えておいていただきたい。

また、酸性泉は、アトピー性皮膚炎の黄色ブドウ球菌の殺菌にいいとされる。
実際に、アトピー性皮膚炎患者の炎症部位を調べると、黄色ブドウ球菌という、有害な細菌が多く存在していることがある。
黄色ブドウ球菌は酸性の環境では繁殖が抑えられ、中性〜アルカリ性の環境下で増えやすい性質がある。
健康肌では皮膚表面が弱酸性であるのに対し、アトピー肌では弱酸性に戻す働きが弱い傾向とされる。

このように、アトピー性皮膚炎は、温泉療法によって改善される可能性が高く、特に酸性泉が効果的のようだ。
しかし、同じ酸性の温泉でも、硫黄成分が多く含まれていると、その成分によって皮膚を乾燥させ、症状を悪化させる場合もあるので注意が必要。
ここ、岳温泉の「単純酸性泉」は、硫黄成分が少なく、アトピー性皮膚炎には最適と言えるだろう。

また、メタケイ酸は137mg/kgと多く含んでいることも注目したい。
温泉の基準値が50 mg/kgだから、実に3倍弱も含まれている。
これは、カラダをコーティングして温める作用があり、天然の保湿成分とも称される、
美肌を求める女性にとっては嬉しい泉質だろう。

一般的に酸性泉は、飲泉すると慢性消化器病に効くと言われているが、残念ながらこの宿では保健所の許可を取っていないそうだ。
もし、飲用できるとしても、酸性泉はたくさん飲むことは好ましくない。
刺激が強いので、水で薄めるなど注意が必要だ。

「花かんざし」では、この貴重な湯を、内風呂・露天風呂・客室露天風呂とも100％かけ流しにしている。
湯温は、気温によってお湯を絞ったりして調節しているという。
また、湯の花の量によっては、薄い白濁湯になることもある。
ただし、刺激の強い酸性の湯が苦手な人は、湯上り後に真水で洗い流すことをお奨めする。
（文・温泉＆宿コンシェルジュ　大竹仁一）