温泉&旅 倶楽部

温泉分析書を読む5STEP

STEP③ 温泉(療養泉)の分類

 「鉱泉分析法指針」(平成26年改訂)

【1】療養泉「泉質」による分類

平成26年(2014年)7月の「鉱泉分析法指針」の改訂により、泉質名が10種類に分類されました。
10の泉質は、下記表のように、3つのグループに分けられます。

グループ 特徴 掲示用泉質名
単純温泉

泉温が25℃以上で、温泉水1kg中の溶存物質(ガス性のものを除く)が、1000mg/kgに満たない温泉

単純温泉

塩類泉

温泉水1kg中の溶存物質(ガス性のものを除く)が、1000mg/kg以上のものを、陰イオンの主成分によって分類される温泉

塩化物泉 
炭酸水素塩泉 
硫酸塩泉

特殊成分を含む温泉

溶存物質(ガス性のものを除く)が1000mg/kgに満たなくても、特殊成分を一定量以上含む温泉

二酸化炭素泉 ⑥含鉄泉 ⑦酸性泉 ⑧含よう素泉 ⑨硫黄泉 ⑩放射能泉

なお、泉質別の特徴は、前項「STEP② 10の泉質と適応症・禁忌症」をご覧ください。

【2】「浸透圧」による分類

温泉分析書で、泉質名が記されているところに例えば「低張性・中性・高温泉」などのように、「浸透圧の分類」、「液性の分類」、「泉温の分類」が併記されています。
そのうちのひとつ「浸透圧」とは、濃度が異なる水溶液の間に生じる圧力の事で、言い換えれば、濃度を一定に保とうとして水分が濃度の薄い側から濃い側に移動する圧力の事です。
「等張性」とは、人間の体液と同じ「浸透圧」の事で、その液体を「等張液」と言います。
人間の体液「等張液」は、9gの食塩を1リットルの水に溶かした食塩水に相当します。
それを基準と考えて、下記表のように3つに分類されます。

低張性
Hypotonic

等張液より浸透圧の低いもの

8g/kg未満

水分がカラダに入ってくる(水分が吸収されやすい/ふやけやすい)

等張性
Isotonic

等張液と同じ浸透圧を持つもの

8g/kg以上
10g/kg未満

 

高張性
Hypotonic

等張液より高い浸透圧を持つもの

10g/kg以上

水分がカラダから出ていく(成分が吸収されやすい/湯あたりしやすい)

スポーツドリンクは、アイソトニックisotonic飲料とハイポトニックhypotonic飲料に分類する事ができます。アイソトニック飲料とは「等張性」の飲料の事。人間の体液と同じ浸透圧の飲料。つまり、「等張液」のスポーツドリンクは水分、糖質、塩分がカラダによく吸収されます。しかし、発汗によって体液が薄まると、アイソトニック飲料からカラダへの吸収速度が遅くなるので、(濃度が同じ状態の)運動前に飲むのがいいとされています。また、ハイポトニック飲料とは「低張性」の飲料の事。塩分や糖質の濃度が低めで、人間の体液よりも低い浸透圧の飲料。よってカラダへの水分吸収が早いという事になります。脱水症状時に飲む経口補水液に近い濃度の飲料で、運動中や運動直後の水分補給にいいとされています。
これらスポーツドリンクと同様、温泉に入る際の目安として、この「浸透圧」の数字は貴重である事が分かります。身体への作用として、「低張性」の温泉に入ると、水分がカラダに吸収しやすくなります。その際、指先がシワシワになる場合がありますが、それは「低張性」の温泉の特徴と言えます。
反対に「高張性」の温泉に入ると、カラダの水分が体外へと出ていきやすくなります。長湯すると、脱水症状を起こしやすくなります。同時に温泉の成分がカラダに吸収されやすくなり、湯あたりの要因になります。 一般に「高張性」の温泉は、濃い温泉であると言えるでしょう。

【3】「水素イオン濃度(pH)/液性」による分類

温泉分析書の「湧出地における調査および試験成績」欄には、「pH値」の記載があります。
化学的には、pH7.0を中性とし、これより低いものを酸性、高いものをアルカリ性。
「鉱泉分析法指針」では、鉱泉の液性を湧出時のpH値により下記表のように分類しています。

強酸性

pH2未満

※現在の「鉱泉分析法指針」ではpH2未満も酸性

酸性

pH2以上~pH3未満

↑↑殺菌効果あり(ちくちくピリピリ)

弱酸性

pH3以上~pH6未満

↑殺菌効果あり(ピリピり)

中性

pH6以上~pH7.5未満

 

弱アルカリ性

pH7.5以上~pH8.5未満

↓美肌効果あり(スベスベ)

アルカリ性

pH8.5以上~

↓↓美肌効果あり(とろとろスベスベ)

強アルカリ性

pH10以上~

※現在の「鉱泉分析法指針」ではpH8.5以上もアルカリ性

【4】「泉温」による分類

「鉱泉」が、地上に湧出したときの温度,または採取したときの温度を「泉温」と言います。温泉分析書の「湧出地における調査および試験成績」欄には、「泉温」の記載があります。
源泉から採取されるときの温度が25℃以上の場合、溶存物質の量に関わらず、「温泉」となります。
「泉温」により次のとおり分類されます。

  分類 泉温

泉質名に、泉温が反映されると下記のような表記になります。
(例)25℃未満の場合→ナトリウム-塩化物冷鉱泉
25℃以上の場合→ナトリウム-塩化物泉

鉱泉

冷鉱泉

25℃未満

温泉

低温泉

25℃以上~34℃未満

温泉

34℃以上~42℃未満

高温泉

42℃以上~

温泉の入浴時の適温は40~42℃とされているが、自然の温泉は人間にそう都合いい泉温にはなっていない。
だからこそ、様々な方法で温度管理をしています。
循環ろ過装置が備わっている温泉施設では、コンピュータが温度管理をしてくれるので、それほど手間はかからりませんが、源泉かけ流しの施設は、大変な手間と労力が必要とされます。 例えば、100℃に近い泉温のところは、冷たい地下水を温泉に加水したり、源泉100%にこだわる施設は、いわゆる熱交換式の方法を使い、例えば源泉井戸から浴槽までに長いパイプを経由し、そのパイプを隣接する川底に沈ませ温度を下げたり・・・と様々な工夫をしています。
逆に、泉温の低い温泉施設は、加温しなければなりませんが、そもそも加温は加水ほど、温泉の成分を壊しません。また、二酸化炭素泉や、放射能泉は、温泉自体が劣化しやすく、源泉100%かけ流しの方法が必須となります。特に二酸化炭素泉は、泉温が35~37℃を超えると、肌にまとわりつくような気泡が消えてしまうため、湧出する泉温のままで入浴する場合が多いです。必然的に長湯になってしまいますが、35~37℃の温泉でも、炭酸ガスの有効成分が血行を促進させ、湯上りにポカポカする場合が多いでしょう。

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この記事の執筆者

執筆者:温泉コム株式会社 CEO 大竹仁一

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